「祖母には言えない」
母が入院して一番驚いた一人に祖母がいる。
「なんで」「どこが悪いんだ」と聞く。
だけど、何ヶ月か後にいなくなってしまうんだよなんてどうしていえようか。
親族で話し合って「肝臓が悪いからしばらく入院する」と話した。「お見舞いに行く」と聞くと「いかない、遠いし」
「帰ってくるのを待っている」とのこと。
隠し通すのは本当に大変だった。一緒に暮らしている叔父はさぞキツカッタろうと思っている。
入院中、何通か母に手紙を書いて渡していた。内容は「ゆっくり治せ」「帰ってくるのを待っている」ということばかり
だった。
元気なうちに会わせなくていいのか…。いつも頭の隅で考えていた。
でも、連れて行ったらたぶん癌だと気付いてしまう。
祖母には母の分まで長生きしてほしい（多分、これは私たちのエゴ、娘に先立たれるなんて祖母にとっては、身を切られる思いに違いない）
私は祖母にも嘘をついている。（母が亡くなった今も祖母は母が癌だったことを知らない）そして母にも。母とは祖父が癌で亡くなった時、告知しなかったのは罪だったのではないかと悩み、どちらかが癌になったら絶対教えてねと約束していた。それでも、言えないものは言えない。
今、仏前に座るたびご免と謝っている。（今、これも私の心の重荷になっている。仕方がないことなんだけど。）