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「八方塞がり」

母の病名は「総胆管がん、胆嚢癌、肝臓、十二指腸への転移」とのこと。病院の先生の書いてもらった
説明図を弟がFaxで送ってくれた。素人目にもこれは「もう切れない」と直感的に思った。
毎日、ネットでなにかないか探す。探す。そんな日が何日か続いた。
テレビでやっていた自分のリンパ球を交換するという病院へも電話したりFaXしたりしたがテレビで放送したため
ものすごい問い合わせと順番待ちでどうしようもなかった。
漢方治療の病院も問い合わせたが、本人がこなければだめだという…。
唯一、主治医がOKをくれるなら処方しましょうという漢方の先生もいらした。

さっそく、帰省し主治医と話す。
「ご家族のお気持ちはわかりますが、それが効くかどうか保証できない。だから承認できない」
そう言われるともう返す言葉もない。
そして、駄目押し。「お母さんに告知しますか?」と聞かれた。
そんなこと出来ない、「もう3ヶ月しか生きられない」などとどうして言えようか…。
「告知しないで下さい」そうお願いした。主治医としては、今の時代告知は普通だといわれて
不服そうな感じを受けたけど、どうしても言えない。

祖父が膵臓癌だったので、その時、母と二人でどれほど勉強したことか…。
母は胆管閉塞のため胆汁を抜くための管と袋をつけられていた。
それだけでも「自分も同じ」と思ってもしまっても不思議はないだろう。ここに追い討ちで
「癌で手に施しようもない」など言えようも無い。

ベッドの上の母は、検査のための絶食で痩せた以外、とても元気そうで
同室の患者さんや看護婦さんと馬鹿話をして笑っている。

あの先生の言葉が「うそ」なんだったらいいのに…。
抗がん剤も放射線も効かない、切ることもできない。癌の進行に伴って
痛まないようにする対照療法しかないってことは、ただその時を待てということなんだろうか。

(私はグペリースを飲んでいた。それでもいつもイライラしていた。)