起立性調節障害と似た症状の病気

Pocket

コミュニケーションセラピスト、家族支援カウンセラーの小瀧 弘美です。

最近の気候の不安定さに閉口してしまう今日この頃ですが、ODっ子のみなさんの体調はいかがでしょうか?
うちの娘は、この気候のせいか体調にも波があり、メンタルも落ち気味、しんどそうです。

昨今、マスコミにも取り上げる回数が増え、起立性調節障害の認知度も上がったのか、比較的早めに病名がつくことも増えました。
ただ、問診だけで起立性調節障害といわれた時に「似た病気」を見逃してしまう可能性もあるかも。
うちの娘が診断された時は、他の病気をいろいろ疑ってそれではないということで起立性調節障害という病名がつきました。

それと、うちもそうですが、闘病期間が長くなるので、違う病気で不調だったとしても「起立性調節障害だから」と見逃してしまう可能性があります。
起立性調節障害と似た病気は結構あるので、保護者としては、それらの病気のことも頭に入れておくことをおすすめします。

起立性調節障害と似た病気

起床時にめまいやたちくらみを起こしやすい起立性調節障害(OD)は、似たような症状を起こす病気と間違われることが多く、それが原因でODの治療の遅れや症状の悪化に繋がることもあります。

ということは、ODだと思っていたけれども、違う病気だった、というケースもあり得ます。特に、長期間の闘病になるODは、保護者の方も「いつものこと」と見過ごしがちです。

似た病気があることを把握しておく必要があると思います。

うつ病

 

ストレスが原因の一因と言われるうつ病は脳の認知機能が低下することで起こる、精神的な病気です。大きな特徴は、抑うつ、意欲の減退、不安やイライラ、集中力の低下など、主に精神的な症状が前面に出やすい病気です。

ODとの共通点 ODとの相違点
・朝起きるのが苦手
・ストレスで症状が悪化する
・女性がかかりやすい
・真面目で几帳面な性格の人がかかりやすい
・不安や抑うつなどの精神的な症状が前面に出る
→ODは身体的症状が主・働き盛りの世代がかかりやすい
→ODは思春期世代・症状の日内変化がない人もいる
→ODは夜になると軽快・抗うつ剤により症状が改善することがある
→ODは悪化する・自殺願望と希死念慮を抱く
→OD単体では起こらない

睡眠相後退症候群

この病気は不眠症のように「眠れない」ということではなく、一定の時間になると眠ることができるので、慢性的な時差ボケのような症状が特徴です。概日リズム、いわゆる体内時計が狂うことで起こる睡眠障害です。睡眠相後退症候群(DSPS)は一般の人と眠りにつく時間に差が出来てしまい、遅寝遅起と見られる生活のリズムになるため一般的な生活リズムで生活することが困難になる場合があります。

睡眠相後退症候群と起立性調節障害は症状や特徴が特に似通った病気であり、ときには併発している場合もあるため、専門家であっても、検査なしに見分けるのは困難であるとされています。

 

ODとの共通点 ODとの相違点
・朝起きるのが困難
・夕方以降は体調が良くなる
・無理して早起きすると体調や生活リズムを崩しやすい
・不登校や引きこもりになりやすい
・体内時計の乱れや周期が原因となる
・過眠傾向がある

てんかん

脳の神経細胞の働きにより、体の痙攣や意識の喪失と言った症状が起こる病気が「てんかん」です。

てんかんの症状は、人の体は神経細胞間の電気信号のやり取りにより動いており、この細胞間の電気信号のやり取りが何らかの理由でうまく行かなくなることが原因と考えられています。

てんかんにはには「突発性てんかん」と「症候性てんかん」があります。前者は原因がはっきりしません。後者は、事故などによる外傷や炎症、腫瘍や感染などにより起こるといわれています。発症年齢は幅広いのですが80%程度は18歳までに発症するとされます。

ODとの共通点 ODとの相違点
・突然意識を失うことがある
・多くの場合子どものときに発症すること
・発作の影響が自律神経系に現れることがある
(頭痛や吐き気など)
・発作に規則性がない
(時と場合を問わず発作が起こる)
・外傷がきっかけで発症することがある
・抗てんかん薬で症状が改善する
(薬が効かない「難治性てんかん」もある)

鉄欠乏性貧血

貧血の原因の中で最も症例が多い貧血です。鉄分の不足から血中の赤血球やヘモグロビンの数が減少し血中の酸素濃度が低下するため体内に酸素が行き届きにくくなるのが鉄欠乏性貧血です。

起立性調節障害と似た症状ですが原因が明確ですので検査をすればはっきり区別することは可能です。

尚、鉄分不足が自律神経系の働きを乱すことで起立性調節障害を起こしたり、起立性調節障害の症状が悪化する可能性も考えられます。

ODとの共通点 ODとの相違点
・朝起きるのがつらい
・めまいや立ちくらみを起こす
・疲れやすく、集中力が低下する
・女性が起こしやすい(月経の影響)
・あっかんべーをしたとき、下まぶたの裏が
白っぽいと鉄不足の可能性がある
・鉄欠乏性貧血は酸素不足
→ODは起立時の低血圧
・鉄欠乏性貧血はヘモグロビン値が低い
・隠れ鉄不足というのもあり、この場合は
フェリチン値を計る

副腎疲労

起立性調節障害と大変似ている症状の副腎疲労。ストレスなどが原因で副腎の機能低下が起こり、副腎で生成されるストレスホルモン(コルチゾール、ノルアドレナリン、アドレナリンなど)が、正常に分泌されなくなることで様々な症状が起こります。副腎疲労では起立性調節障害と同じ身体症状が現れますが、精神的にも様々な症状が現れるという点が異なります。
ただし、副腎疲労が根本原因となって、自律神経系が乱れ、起立性調節障害の症状を起こすというケースも考えられます。

ODとの共通点 ODとの相違点
・身体症状はほぼ同じ
・朝起きられない
・とにかく疲れやすい
・ストレスで症状が悪化する
・精神症状も現れる
(抑うつ、落ち込み、意欲減退)
・副腎疲労はストレスホルモンの枯渇
→ODは自律神経系や循環器系の未発達による

慢性疲労症候群(CFS)

いくつかの条件や定義がありますが、おおむね原因不明の疲労や微熱などの症状が6ヶ月以上続くのが慢性疲労症候群です。原因として遺伝的要因やストレス、副腎疲労、自律神経系の乱れなど様々なものが考えられるものの、特定が出来ない、または人によって原因が異なっている可能性があるという原因不明の病気の総称とも言えるでしょう。起立性調節障害と症状がよく似ているため間違われることもあります。

ODとの共通点 ODとの相違点
・日常生活が困難なほどの疲労感や
倦怠感が続く。
・睡眠相の後退
・思春期の子どもにも起こる
・症状の発生は起立を原因としない
・微熱や関節痛が起こる
・休養をとっても回復しない

血糖調節障害

甘いものと摂り過ぎなどのせいで、血糖値の調節機能がうまく働かなくなる血糖調節障害。血糖値が下がりすぎてしまう低血糖状態になりやすくなってしまう症状で、めまいや立ちくらみ、朝起きられないなど、起立性調節障害と非常に良く似た症状が起こります。
また、血糖調節障害を起こす過程では、副腎の疲弊による副腎疲労が起こっているケースも考えられるなど、起立性調節障害とは縁深い症状です。

 

糖分の過剰摂取から血糖調節障害に至る流れ

糖分摂り過ぎ→インスリンの大量分泌→血糖値が低下しすぎる→アドレナリンやコルチゾールが分泌されて血糖値をあげようとする→副腎が疲労→血糖値が上がらなくなり低血糖を起こしやすくなる→体は血糖値をあげようとして糖分を欲する→以下、悪化のループが出来てしまいます。

血糖値の低い状態では、起立性調節障害と非常に似通った症状が起こります。

めまい、立ちくらみ、朝起きられない、日中常に眠い、集中力低下、疲労感、冷や汗、お腹がすぐ空く(過食)、頭痛(脳の血糖不足)、イライラ、ボーっとする、あくびが出る

 

朝は特に低血糖を起こしやすい

人は夜に食事をとった後睡眠するため、次の日の食事までの間は特に血糖値が下がりやすい状態になるため、朝起きる頃には低血糖の症状が起きやすく、これが血糖調節障害で朝起きられない原因とも言えます。

また、近年では朝食を取らない子どもの割合が増え、食事と食事の時間がさらに空きやすいため、学校に行ってからも低血糖で頭がボーっとしたり、めまいや立ちくらみを起こしやすくなります。

糖分の過剰摂取→血糖調節障害と副腎疲労が発症→交感神経の減弱→起立性調節障害の発症

といったように血糖調節障害は起立性調節障害と似た症状を持っているというだけでなく、起立性調節障害の原因そのものの一つにもなり得るとも言われています。

 

甲状腺機能異常

甲状腺の機能に異常が起こり甲状腺ホルモンの分泌が過剰になったり不足したりすると、疲労感、気力低下、気分の落ち込み、睡眠障害など様々な症状が現れることがあります。この症状が起立性調節障害とよく似ているため、起立性調節障害と区別するために甲状腺の検査をすることもあります。

甲状腺は細胞の新陳代謝を活性化する甲状腺ホルモンが分泌される臓器です。甲状腺の病気は甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症などがあります。

ODとの共通点 ODとの相違点
・疲れやすい
・寝付きが悪い
・集中力が低下する
・ストレスが原因で機能異常が
起こることがある
・女性の発症が圧倒的に多い
(男性の10~20倍。ODの場合は
せいぜい2倍程度)
・甲状腺の機能異常により起こる
→ODは自律神経系の異常)
・甲状腺ホルモンの分泌量などを
検査することで判明する
・自己免疫疾患であるとされる

脳脊髄液減少症

脳脊髄液減少症は交通事故をはじめ、何らかの外傷後に起こる脳髄液の圧力、髄液圧が低くなることで頭痛やめまい、吐き気などの症状が現れる病気です。ODと似ている点は、特に起立時に起こる場合が多いということ。
新しい概念の疾患で、治療法の確立や法整備が急がれています。

ODとの共通点 ODとの相違点
・起立時に頭痛やめまいなどが起こりやすい

 

 

・交通事故などによるムチ打ちなど、
体への衝撃が原因となる場合が多い
・髄液が漏れ出すことが原因とされている
・男性に多い
・ブラット・パッチによる治療が行われる(効果は低い模様)

 

脊髄液減少症とは(脳脊髄液症患者・家族支援の会北海道「絆会」様のサイトより引用です)

脳脊髄液減少症とは何らかの理由で脳脊髄液が減少し、頭痛や様々な全身症状が現れる疾患です。脳脊髄液減少症特有の症状に起立性頭痛がありますが、必ずしも全ての患者に現れるとは限りません。全身症状についても個人差が激しく、脳脊髄液減少症との因果関係が立証されていないものも数多くあります。脳脊髄液減少症には治療方法があるため基本的には治る病とされていますが、現時点では研究段階にあり、未だに不明な部分が多いのが現状です。

平成28年4月より硬膜外自家血注入法(通称ブラッドパッチ)に保険適用(診断基準に該当するもの)

現在の医学では直接脳脊髄液量を図ることができません。そのため、厚生労働省の研究班の診断基準(平成23年発表)では、「脳脊髄液漏出症」と「低髄液圧症候群」についてのみ、診断基準を定めました。また、漏出症と低髄は同時に発症していることが多く、明確に切り分けることは不可能とされています。判定基準は下記リンクをご覧ください。

脳脊髄液漏出性画像判定基準・画像診断基準

平成28年度4月より、診断基準に該当するものについては、保険申請病院において、保険適用でブラッドパッチを施術することができるようになりました。(保険申請病院につ
いては各自治体にお問い合わせください)

平成27年度までの研究(脳脊髄液漏出症と低髄液圧症候群)は、診断基準が定まったため終了しました。
平成28年4月より、これまで研究対象外であった「脳脊髄液減少症の非典型例及び小児例の診断・基準・治療法開拓に関する研究」が始まっています。
詳しくはこちらのサイトをご覧ください。

脳脊髄液減少症の発症原因と症状
※脳脊髄液減少症の発症原因や症状は、脳脊髄液漏出症・低髄液圧症候群、子供・その他の病態もほぼ同じです
●発症原因
交通事故やスポーツ障害など体や頭への強い衝撃、脱水、出産時等のいきみ、穿刺、原因不明など

●症状
・起立性頭痛

 

・その他
起立すると髄液の減少のために脳が下垂して、頭蓋底部の硬膜に異常な圧が加わり、激しい頭痛を生じます。この頭痛は、横になると軽減するという特徴があります。(必ずしも現れるとは限りません)

頭痛(片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛など)、頸部痛、頭重感、聴覚過敏、光過敏、全身倦怠感、疼痛、めまい、吐き気、脳神経症状、自律神経症状、内分泌異常、免疫異常、睡眠障害など。

※外傷が原因の場合
交通事故やスポーツ障害など、頭や体に強い衝撃を受けた場合、表面的な外傷がなくても脳脊髄液減少症の発症と同時に、脳や頸部を損傷している可能性があります。それぞれの損傷によって、診断・治療可能な医療機関が異なりますので、ご注意願います。

※症例
頚部組織の損傷(主に整形外科)   椎間関節症、胸郭出口症候群など

脳損傷(脳外科・神経内科等)    高次脳機能障害、軽度外傷性脳損傷など

子供の脳脊髄液減少症

子供(18歳以下)の脳脊髄液減少症は大人とは異なった特徴があります。小学生、中学生、
高校生と、成長の過程によって症状の現れ方や対処の仕方、問題点なども異なります。
また、大人の診断方法が当てはまりにくいと言われています。

小学生
自分の症状を表現する力に欠ける傾向にあります。よほどひどい頭痛がない限り、脳脊髄液減少症と気付きにくいのが
特徴です。保護者や養護教員など、周囲の大人の注意が必要です。小児にはブラッドパッチ治療は負担が大きいため、
保存療法(臥床安静・水分補給)で回復することが望ましいとされています。
中学生
体育の授業や部活が原因で発症する機会が増えます。また、急激に身長が伸びる時期でもあるため、起立性調節障
害との区別が難しくなります。欠席日数が増えることで、高校進学等に影響が出ることが大きな問題となっています。
高校生
中学生と同様の傾向にありますが、より大人に近い体格となっているため、脳MRIなどで診断できるケースが増えてきま
す。高校では欠席日数や単位不足により、進級や卒業に影響が出ることがあります。

脳脊髄液減少症の診断・検査・治療

●診断・検査方法
問診、生理食塩水パッチ、脳MRI、MRミエロ、CTミエロ、RIシンチなど。

●治療方法
・保存療法(臥床安静と水分補給)
2週間程度、23時間平らになって安静を保つ。
一日1.5~2Lの水分を摂取するよう心掛ける。

・硬膜外自己血注入法(ブラッドパッチ)
保存療法の効果がない場合に行う。
治療効果には個人差があり、2~3回必要とすることが多い。
診断基準に該当する場合、保険申請病院において保険治療が可能
非該当の場合は全額自費となる
・アートセレブ(人口髄液)
ブラッドパッチ効果があるのにもかかわらず、症状緩和が乏しい等の時に使用。

その他の注意事項

■治療(保存療法・ブラッドパッチ)後の経過
治療後、硬膜の傷は2週間から1カ月程度で修復します。しかし、髄液漏出が止まっても、髄液の生成が追いつくまで2~3ヵ月かかるのが一般的です。また、治療後6ヵ月間は再発のリスクが高いと言われています。諸症状についても、症状ごとに回復の程度が異なります。そのため、真に回復を実感するまでに1~3年かかるのが普通だとも言われています。

■諸症状の緩和について
脳脊髄液減少症特有の症状である起立性頭痛は、ブラッドパッチ等の治療の後、高い確率で消失することが分かっています。
その他の症状についても消失もしくは軽減しますが、どこまでブラッドパッチの治療効果を期待できるかは不明で、個別に治療・投薬を必要とするものが多いようです。

■完治について
治療3ヶ月後に髄液漏出が治っているか否かの判断を行います。ただし、その時
点で髄液漏出が治っていたとしても、諸症状は消失していないのが一般的です。  現時点では完治に関する明確な基準がないため、完治時期については医師の判断となります。

■再発について
完治していても、再び強い衝撃を受けることで再発することがあります。ただし、諸症状が悪化したというだけでは再発とはみなされません。再発か否かは、専門医の判断になりますのでご注意願います。

ODと原因が異なる病気

ODと症状は似ていても、原因が明確に異なる病気が幾つかあります。てんかん、鉄欠乏性貧血、甲状腺機能異常、脳脊髄液減少症の4つです。

これらの病気は、それぞれ検査を受けることによって、ODとは分けて治療を受けることが出来るかと思います。

ODと同じく自律神経系が原因の病気

自律神経失調症の一種であるODは、同じく自律神経系の問題による疾患と、症状の現れ方は違っても、元を辿ると自律神経系の異常が原因となっているものが複数あります。

うつ病、睡眠相後退症候群、副腎疲労、慢性疲労症候群、血糖調節障害の5つは、ストレスや自律神経系の乱れが発症に深く関わる病気であり、現れる症状もODと非常によく似ているため、見分けることが特に困難で、間違えやすいものです。

また、ODと症状の似たこれらの病気はそれぞれが同時に併発することもよくありますし、ODの悪化からうつ病などを発症するケースも少なくありません。

ODは思春期の子どもの間では10人に1人程度の割合で起こると言われる、決して珍しくない病気ですが、他の病気と混同して間違った治療を行ったり、適切な治療が行われなければ、症状が悪化していき、その結果、子どもの学校復帰が遅くなったり、後の社会的孤立や引きこもりに繋がることも考えられます。

自律神経系は、一度乱れると自分一人で治すのは難しく、治療にも長い時間と多くのお金を必要とします。治療をためらった結果、症状が悪化してさらに治りにくくなるだけでなく、社会への参加や復帰が困難になってしまいます。

起立性調節障害のような症状がある時は、きちんと専門医の診断を受けるようにしましょう。自己判断は禁物です。似ている病気があることも把握して「あれ?」と感じた時は医師の診断を受けるよう心がけましょう。

 

にほんブログ村 病気ブログ 起立性調節障害へ
にほんブログ村


起立性調節障害ランキング

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です